碧月れいの 【ショートshortシリーズ】 No.10 Sweet memories
🎶夕べの星
『ショートshortシリーズ』
10. Sweet memories
人には苦い記憶や辛い記憶もあるが、
必ず、甘い記憶というものがあるはずである。
片想いだけど、心を奪われた人とすれ違う瞬間、
素敵だぁ…と思う人と目が会った瞬間、
あるいは恋し始めたときの恥じらいや触れられた時の
ドキドキ感など…、
スウィートメモリーズといえるものではないだろうか。
ゼロの王子は、一人でも多くの男女に、
恋する喜びや幸せを感じてもらいたいとの思いをもっていた。
……
王子が真尋とLINE電話でやりとりをしていて、
思いついたのが、瀬戸内恋島館のアイデアだった。
月と星と人が瀬戸内で煌めきあい、
恋の花が咲く恋する婚活シネマスポットである。
王子は、空飛ぶプリュレで瀬戸内海上空を散策し、
フランスの湖上に浮かぶ
"モン・サン・ミッシェル修道院"
をイメージできるスポットを探していた。
王子は、藤堂率いるマンハッタン-Ⅱ~9期生の
精鋭学生たちの力を借り、
第2の恋人館を建てることにした。
そして、その着手を前に、関係者を招いた。
次第に声も回復してきた王子は、
マンハッタン-Ⅱと恋人館を繋ぐ、
都会的なハートある仲間たちを、
" Stylish RICH "と呼ぶことにした。
もちろん真尋への信頼あっての話しである。
今や真尋は、藤堂や同期生はもとより、
礼子、マンハッタン-Ⅱの先輩後輩たち、
シルクキャッツチーム、家族、友人、
警察関係者などあらゆる人たちからの信頼を得ていた。
……
快気祝いを兼ねたパーティーの前夜、
満月を眺めながら、
王子は真尋の瞳を見つめた。
━━(王子)私たちのこれからの
人生のレールは1本になるでしょうか…?
━━(真尋)…。そうですね。
気持ちの中では、1本だと思っておりますが。
どこにおりましても、お慕いしている
だけで、私は幸せでして…。
それではいけませんか?
━━(王子)…。
報道キャスターになる真尋さんを
恋人館に留めてはいけないでしょうね。
━━(真尋)…申し訳ありません。
王子様へのときめく
心は消えることはありませんよ。
王子様の世界一のファンのまま、
お付き合いを続けてはいけませんか?
━━(王子)恋人でいてもらえる…
ってことでいいでしょうか。
━━(真尋)はい、王子様…。
私たちだけのスウィートメモリーズ
を大切にいたしましょうよ。
━━(王子)ええ、そうしましょう。
王子は正式にプロポーズしたいところだったが、
たぐいまれなき才女の真尋さんを
囲ってはならないと、言葉をのんだ。
ゲストルームに戻った真尋。
「本当は、真尋は王子様の
胸に飛び込みたいんですよ…」とポツリ。
部屋から満月を仰ぎながら、
真尋は泪した。
「天空の恋人館」スピンオフ
ショートshortシリーズ完