No.1 孤高の最終便

🎶アナザープラネット

孤高の最終便


JAL ボーイング767
ニューヨーク最終便が
飛び立とうとしていた。

快盗シルクキャッツは
満身創痍の状態で座っていた。

まる一年かけ、
盗まれた父の絵画を探し、
世界中の美術館を調べていた。
女性学芸員から
情報を聞き出そうと近づいていくので、
“恋泥棒”とも揶揄された。

しかしその色男も、
警備員や警察官との
逃走劇の際の脚の負傷によって、
ボルタリンで鍛えた
軽やかな身のこなしが出来ず、
肩を落としていた。

警察にマークされる
運命に泪するシルクキャッツ。

最終便は自分の孤独を
受け取めてくれる友のような
存在だと感じていた。

フライトは人生に似ている。

新しい行動に向かう際の決断は、
このジェットエンジンのように、
ありったけのパワーを出して、
力を絞り出す意思が必要だ。
その意思を、
父のためにミスグリーンに注ごうと、
シルクキャッツは決意していた。

ファーストクラスで
顔見知りの客室乗務員が、
気遣いをみせた。

── (高村)一色様、…よろしければ、
マティーニでもお持ちいたしましょうか…。

──(一色)あっ、どうも…。ええ。

いつもは爽やかで、
明るい一色だったが、
高村はこんな苦悩した顔を
見るのは始めてだった。

<怪我もしているみたいだし、熱もありそう。
きっと、何かあったのだわ>
高村はそう感じた。

昨年の恋人館で、
ゼロの王子のために力を貸したシルクキャッツ─。
亜梨沙のことも気になっていた。

父の絵画盗難事件が解決すれば、
シルクキャッツは廃業すると決めていた。

<本当の自分に戻ることができれば、
亜梨沙に会いに行ける!>

<しかし、自分は仮にも、
事情があったにせよ、
世界中の美術館に忍びこんできたので、
自首はしなくてはならない。
となれば亜梨沙さんとは─>

こんなふうに考えているうちに、
なかなか亜梨沙に会いに行けないでいた…。

………………

〔 病院の特別室 〕
最終便で高熱を出し、二日間眠っていた。
麻酔が覚めて痛みで目が覚めたら、
前方に自由の女神が見える
セントラルタワー病院にいた。

まる二日間、父、ミスグリーン、
亜梨沙のことばかり考え、
うなされていた。

シルクキャッツの父親は、
女性描写で知られた世界的画伯である。

一色雪也はミスグリーンの
亡き母を愛していた。
だがミスグリーンは信じていなかった。
亡き母が重度の病気になったときも、
一度の見舞いもなく、
作品に打ちこんでいたからである。

その誤解を解いた上で、
ミスグリーンには、
時価一億円以上もするといわれる
『みらいの鐘を鳴らす女』
盗難事件の解決に
協力してもらわなければならなかった─。

シルクキャッツは、
病室に見舞いにきた
碧川と三井を前に指示を出した。

秋のニューヨーク
~ミスグリーン劇場の幕開けである。

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