No.2 ニューヨークの憂い

🎶秋色の丘

ニューヨークの憂い


10月後半から
11月中旬にかけて紅葉が見られ、
セントラルパークの公園は
ひときわ美しい。

今秋のニューヨークには
一足早い雪が降り、
紅葉とのコントラストが
ロマンチックである。

マンハッタン-Ⅲ開校準備に
張り切る礼子の手伝いで、
亜梨沙、リリカ、うららは、
ニューヨークに来ていた。
表面的にはいつものように明るかったが、
頭の中は恋人館での恋のお相手のことが
頭から離れないようだった。

礼子と真尋は時折、
ミスグリーンとシルクキャッツの
話しになった。

━━(礼子)ミスグリーンは
簡単に人に会わないそうよ。
絵画盗難事件の解決に協力してくれるかなぁ。

━━(真尋)ええ。
自由の女神が満月に照らされる夜は
リバティ島に会いにくるそうですよ。
シルクキャッツのチャンスはそのときですね。

女神の正式名称は
「世界を照らす自由」でしょ?
だから、みんなの心を照らしてもらえますよ、
きっと。
それにグリーンですし(笑)。

━━(礼子)あら、ホント、グリーンだわ。
さすが。藤堂のためにも、頼むわね、真尋。

真尋はマンハッタン-Ⅲ開校準備とは別に、
シルクキャッツの父親である
一色雪也画伯の絵画盗難の謎解きを助けるよう、
藤堂オーナーより指示を受けていた。

…………………………

ミスグリーンは10年ほど前に、
神戸の恋人館を
空間プロデュースしたことが
世界のセレブたちに話題になり、
またたくまに人気デザイナーに──。

ジュエリー作家でもある
異色のアート空間デザイナーは、
名誉ある「21世紀未来アート賞」に
ノミネートされている。

彼女はたぐいまれなき
美貌の持ち主と言われながら、
ほとんど人前には出なかった。
なぜだろう………。

ところで、
ミスグリーンにコンタクトをとるには、
「バーバラ智美」という日系女性を
通すことになっていた。

バーバラは、
かつて恋人館のアート空間や
ペントハウス内の
プラネタリウム制作に
ミスグリーンを繋いだ
美術コーディネーターとしても
知られていた。

バーバラは、
ミスグリーンについて、
どのメディアに対しても、
スタイリッシュな感性と
美的なアート空間センスが
群を抜いていると断言している。
そして「感性への慈しみ」
という言葉がお気に入りらしい。

ミスグリーンは、
混沌とした時代には、
頭で考える思考に限りがあると。
それ以前に
<瞬間に感じとる感性力>が重要だと言う。

ニューヨークで
検事をしている真尋の実兄によれば、
SNSのフォロワーが300万人を
越える人気のミスグリーンが
犯罪に利用されないか、
合衆国政府も憂慮しているとか。

……………………………

ところでミスグリーン自身、
母が愛した一色雪也の
遺伝子を受け継いでいることを実感していた。
だが、最愛の母を病魔に
襲わせた一色を許せなかった。

生前母親から
譲り受けた緑のペンダントは、
ダイヤモンドの光りが眩しく、
彼女の首をいっそう美しくさせていた。

日本にいる父親とは絶縁状態にあり、
余命幾ばくもない状態だとは
知らされていなかったのである。
しかも、そのペンダントが
絵画盗難事件の鍵を握る重要な形見だったとは!

そして…
久しぶりの日本への里帰りで、
初恋のまま行方不明になった人とは
再会できるのだろうか──。

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