No.3  心にメイクを・・

 

🎶 夕暮れコスモス



《FM恋の深夜便》オンライン相談コーナーへの
応募者が跡を絶たない。

ミス麗子の人気は高まるばかりで、
役員会議で話題に上がるほどであった。

その日の相談者は、婚活に12回も失敗し、
自分の魅力のなさに意気消沈している裕子。

裕子は三姉妹の中で自分が一番容姿が悪く、
何をやっても自信がないという。

美大卒業後、
ローマで絵やアートの勉強に打ち込みながら、
国際結婚を願っていたが、失恋して帰国。

こうした自分話をしゃべり続けていた。

………………………………………………

ミス麗子:もうそれぐらいで、お話しはいいわ‥。
貴女、イタリア男にナンパされなかったでしょ。
たぶんゼロね。
貴女にときめき、Kissしたいとは思わないもの。

裕子:え? なぜ、ゼロとわかるのですか?
私、どこがダメなんですか?
やっぱり顔ですか?
顔なら、プチ整形も考えます。
直しますから、ズバリ教えてください!

ミス麗子:整形は必要ないわ。
それより、ローマで絵を学んだのなら、
絵画<聖マタイ召喚>の
メッセージがわかるはず。

失恋しちゃって、目が曇ったかしら?
光と陰の両方をみることを
作者は暗示しているでしょ?

キリストが下を向いている
レビ(のちの聖マタイ)に
光を当てようとしているのに気が付かず、
お金を数えている絵よ。思い出した?

裕子:あっ、はい。そうでした‥。
コントレー聖堂で
カラヴァッジョのその絵を
見たことは見たのですけど‥。

ミス麗子:自分と照らし合わせて、
考えなかった〜ということね。

貴女、このオンラインの画面でも、
下ばかり向き、自分の陰しかみていないじゃない。
そんなことで、恋や結婚ができる?
自分の陰ばかり見ている人を
ディナーに誘うイタリア男はいないわよ。

裕子:そうですね‥。

ミス麗子:でしょ。
絵はキリストの後ろから光が差し込んでいる。
レビはその光りに魅せられ、
キリストの弟子になった。

そうだったわね。

貴女の現実は、
顔をあげたらそこは光の海 ─。
顔をあげないと、
いつまでも光が見えないわ。

その容姿なら、
心にメイクすればモテ顔になるもの。
おわかり?

裕子:心にメイク‥、ですか。
私、モテ顔になりたい!
恋がしたいです!

ミス麗子:素直でいいわ。
男たちが抱きたくなる女になると決めましょ!
いいわね。

裕子:はい、ぎゅ~っと、
引き寄せられたいです。

ミス麗子:そう、そう、その調子よ。
その表情、合格だわ(笑)。

じゃ、もう一度、ローマへ飛ぶことね。
<聖マタイ召命>の絵の見方が変わるわ、
きっと!!
何か感じるものがあれば、
電話してきていいわよ(笑)。

裕子:有難うございます!!
ミス麗子さん。
私、行ってきます ─。
心のメイク道具を必ず見つけてきます!

ミス麗子:まずはお姉さんたちと
比較することから卒業しなさい。
それができたら、
また婚活作戦に移りましょう!

息ができなくなるぐらいにぎゅ~っと
抱きしめてくれる男をゲットする。
いいわね。さぁ、行ってらっしゃい。

【 ということで、裕子は再びローマへ飛んだ 】

…………………………………

二ヶ月ほどして、
裕子からメールが届いた。

<聖マタイ召命>は凄い絵でした。
絵の中にはさまざまな光が
あったことに気づきました。

ローマのみならず、
パリやウィーンの美術館を周っています。
そして、もう一度ローマに戻り、
自分の光を信じ、帰郷いたします。

メールの中には絵文字が遊んでいた。
ミス麗子は微笑みながら、
ベルギーチョコのお気に入りの
レオニダスを舌にのせた。

ミス麗子:このチョコはスコッチが合うわねぇ‥
スコッチの香りを嗅ぎながら、
「今夜は会えないの?
ほっておかれたら知らないからネェ!」

小悪魔顔で誰かに電話をしていた ─。

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