No.2 みゆと雪乃
🎶受け継がれゆく心
2023年新春第一回の番組が大雪のために、
あわや中止になろうとしていた。
ゲストのミス銀座コンシェルジュグランプリ
受賞者の瀬戸遥さん、
江木ディレクターが
大雪のために来れないからである。
ADさん、プロデューサー、
ミス麗子の3人だけが
麹町のラジオ局に着いていた。
そんなとき、
一人の女性が局の玄関に現れ、
泣き崩れ、
ミス麗子に助けを求めてきた。
「ジュテーム」のみゆだという。
ミス麗子はADさんに耳打ちした。
大雪で、ゲスト不在だったので、
急遽異例の出演というハプニングになった。
……………………………
みゆは異常な片想いが続き、
その苦しさや切なさを吐露した。
みゆ:同じ店で働くのが辛くてつらくて…。
もう、壊れそうなんです。
ミス麗子:でも、まだ壊れてないわね。
で、アナタはどうしたいの?
みゆ:何回も意思表示しましたけれど、
ダメなんです…。
「好みじゃない」と言われました。
ミス麗子:じゃ、好みになるか、
キッパリあきらめるか、
どちらかでしょ。
みゆ:<沈黙>。
ミス麗子:アナタ、銀座の女に向いてないわね。
そんなに好きで好きでたまらないなら、
その男性の邪魔にならないようにしてあげなきゃ。
それが銀座女の心意気よ。
みゆ:<椅子から転げ落ちそうになる>
あれアナタ、一杯のんでいるじゃない!
ADさん、控室で、休ませてください。
この子はあまり眠ってないから、
このままぐっすり寝させちゃいましょ。
肺炎になったら大変だし。
………………………
番組は後半に入っていた。
二人目のハプニングゲストが
スタジオに入ってきた。
「ジュテーム」の雪乃だった。
ミス麗子:お店お休みだったのに、
お呼びだてして…。
雪乃ママ:とんでもありません。
そんなことより、
うちの子がご迷惑をおかけしまして、
大変申し訳ございません…。
<立ち上がって、深々と会釈する>
ミス麗子:最近、ホステスの質が落ちたものね、
お互い、苦労が耐えないわ(笑)。
雪乃ママ:麗子ママのお店の女の子の
レベルに近づきたいのに、
こんなことじゃ、お話になりませんし。
ミス麗子:雪乃ママはよくやってらっしゃるわ。
お店の評判もいいし。
雪乃ママ:まだまだですけれど…。
うちは黒服がしっかりしてるお陰で、
なんとか、女の子たちの脱線を
防いでいたのですが…。
ミス麗子:みゆちゃんが惚れた黒服は?
雪乃ママ:ホステス人気No.1でして、
仕事もよくできますし。
誰もが惚れるでしょうね(笑)。
ミス麗子:私でも?
雪乃ママ:もしかしたら ……(笑)。
あっ、失礼しました。
ミス麗子:まぁ、おっしゃいますわね(笑)。
気になるじゃない…。
近く、お店に遊びに行こうかしら。
雪乃ママ:そういうところ、素敵!
お若いはずですわ。
私も見習います。
ミス麗子:私をからかいにきたわけじゃないでしょ!
………………………………
番組が終わった。
みゆが目を覚ましたところだった。
みゆの前には「ジュテーム」の雪乃がいた。
雪乃はみゆを自分のマンションに
連れて帰ることにした。
麗子ママがわざわざ二人を見送りに
局の玄関まで見送りにきていた。
<迷惑をかけた私たちを見送る
ミス麗子の暖かな笑顔を見ながら>
雪乃は、
銀座のクレオパトラといわれた
麗子ママの器量の深さに
感動していた。
氷点下2度の早朝5時、
ミス麗子は、そのタクシーが
見えなくなるまで見送っていた ──。
二日後の月曜日夜の銀座、
「ジュテーム」はいつも以上に賑わっていた。
しかしそこに、みゆの姿はなかった ──。