No.4 予期せぬ再会…
🎶春風
予期せぬ再会…
碧川と三井は、真尋と一緒に、
セントラルパーク沿いの高級住宅街にある
ミュージアムロードを歩いていた。
芸術と文化の香り漂う雰囲気が
最高である。
ミスグリーンに会うなら、
彼女の空間アートや影響を受けた
作品を研究しておくべきだと、
真尋に促されていたからである。
次の満月の日までまだ時間があったので、
真尋のすすめに従った。
──(真尋)
おせっかいなんですけれど…。
リリカは、
グッゲンハイム美術館に
向かっていますよ。
うららは、ホイットニー美術館に
着いた頃かしら。
あんな素敵な乙女を一年もほっておいて
不誠実じゃありません?
──(碧川)本当に申し訳ありません…。
あれから、シルクキャッツと
世界中の美術館を回っていまして…。
リリカさんのこと…、
気になっていました…。
──(三井)
うららさんとの感動はいまもこうして…。
この件が解決したら、
会いにいきたいと思っていました。
本当です!
──(碧川) シルクキャッツも、
亜梨沙さんのことが
頭から離れないみたいなんです。
彼は信頼できる人です。
──(真尋) そのことが一番気がかりで。
亜梨沙、飛び上がって喜ぶでしょうね!
──(三井)亜梨沙さんに、
シルクキャッツを
見舞っていただけないかと
ご伝言してもらえないでしょうか。
リリカとうららは
ニューヨークの休日を楽しんでいた。
まさか、二人と予期せぬ
再会になろうとは─。
五番街沿いにある
グッゲンハイム美術館の
外観は美しかった。
碧川は、白い巻き貝のような建物や
内部の螺旋階段など
フランク・ロイド・ライトの設計が
ミスグリーンに影響を
与えたのだろうことを想像していた。
ちょうど、鑑賞しに行くところだった。
まさか、そこにリリカが
来るとは奇遇だった。
これが運命というものなのだろう。
……………………………
──(碧川) …こんにちは。りりかさん!
──(リリカ) ……、あっ、碧川さん…。
<リリカの鼓動の高鳴りが凄かった>
──(碧川)
恋人館ではお会いできて光栄でした。
──(リリカ) …ええ。
──(碧川) 何の連絡もないまま
消えて申し訳ありませんでした。
失礼を許していただけませんか…。
──(リリカ) ええ。
貴方を信じてよいかどうか、
私、わからなくて…。
嬉しいですが、とても複雑な気持ちです。
──(碧川) そうだと思います。
あの日以来、
ずっと貴女のことを考えていました。
気持ちに偽りはありません。
事情があって、世界中を回っていまして。
碧川の目は真剣そのものだった。
リリカは燃える心を抑えながら、
冷静さを装っていた。
アメリカンアートが気に入りの三井は、
うららと趣味が合うことに興奮していた。
絵を鑑賞して回るうららを見つけた。
相変わらず、美しい。
──(三井)
<背後からそっと近づき、耳もとで>
お嬢さん、
テラスからは素晴らしい
マンハッタンが見えますよ。
うららが振り返ると、
三井がいた。
──(うらら)あっ、三井さん…!
──(三井)うららさん…。
お元気でしたか?
一年も寂しい思いにさせてしまい、
…本当に申し訳ありません。
<うららをそっと抱きしめる三井>
<泪が止まらず、言葉にならないうらら>
三井はうららをエスコートしながら、
コレクションを説明して回った。
美術館内のアンリーウォーホルや
エドワードホッパーなど
20世紀以降のアメリカンアートは
素晴らしく、
二人は現代アート最先端を堪能していた。