No.5 ミス麗子 vs 快盗 レーヴル

 

🎶 雨上がりの空に

夜の銀座で、
ちょっとミステリアスな
フランス男のことが
話題になっている。

最近、プロのホステスが
次々にナンパされているという。

ところがKissだけしては、
さっと姿を消し、
また違うホステスの唇を
奪っていくとの噂が広がっている。

実害はなく、
犯罪ではないものの、
夜の銀座の四天王ママたちが
ミス麗子の番組に出演し、
全ホステスたちに直接、
注意を呼びかけた。

それにしても、男性には馴れた
プロのホステスたちをナンパするなんて、
簡単にできるものではないはずだ。

一体、このフランス男は何者だろう?

さしずめ、
快盗レーヴルと呼ぶことにしよう。

ナンパされたホステスたちは
ヘアスタイルも、顔立ちも、
体型もさまざまで、
何の共通項も見当たらなかった。

ナンパのされ方は、
美容室やブティックから
出てきたところで
男性の体やバッグが当たり、
片言の日本語で、
そのお詫びにCafeを
ご馳走したいと言ってくる。

スマートにプラダのコートを纏い、
キャラクテールエクレアアリゲータブーツを
履いている。

軽く200万を超えるファッションである。
しかも紳士的な甘い語り口で
さりげなく誘ってくるらしい。

銀座で身体を張っているとはいえ、
20代後半の乙女たちだ。
雰囲気にのまれてもおかしくはない。

それから3か月が経過したが、
まだ唇が奪われつづけている
という事実に、ミス麗子が動いた。

……………………

〔ある夜の番組の冒頭で〕

ミス麗子:私の娘たちのような
女の子の唇を奪い続けている
噂の快盗レーヴルさん。

勇気をお持ちなら、
この番組にお電話をくださらないかしら?

貴方は唇のみならず、
彼女たちの気持ちも奪っていること、
わかっています?

貴方、ゲランのライバル社、
ルイフランス(架空の名称)が
雇用したテスターでしょ?

銀座高級クラブの
女の子たちの鼻を
馬鹿にしてはいけないわ。

貴方の口元から、
かすかにアーモンド、
チェリー、バニラ、
ホワイトムスクの
香りがしたそうよ…。

ウェディング香水で
使うものばかりじゃない。
花嫁に憧れる乙女心につけこみ、
Kissするなんて、許さないわ。

貴方のお国ナンバー1の調査会社のボスは
うちの店のお得意様よ。
貴方のことなど、
一週間でわかってしまうわよ。

これ以上やるなら、
ミス麗子を敵に回すことになるけれど、
さぁ、どうするの?
まずは傷心の女の子たちへの
償いをなさいナ!

〔スタジオブースの向こうで、
番組プロデューサーやスタッフさんらが
拍手をおくっていた〕

…………………………

〔翌週の番組の冒頭、一本の電話がはいった〕

快盗レーヴル:ボンジュール。
この度はお騒がせいたしました。
お詫びします。詳細はお話しできませんが、
銀座から退散することにしました。

ミス麗子:昨夜の金曜日、
女の子たちに薔薇の花と詫び状が
届いたと報告があったわ。

快盗レーヴル:せめてもの気持ちです…。

ミス麗子:貴方、フランスで生きていけるの?
この失点で、立場悪いでしょ。
どうしてもお国にいられなくなったら、
連絡してらっしゃい。
そのナンパ術、健全に役立つ方法がありますよ。

すべてフランス語でのやり取りだった。
しばらくの間、
夜の銀座はこの話しでもちきりだった。

ミス麗子が銀座を歩くと、
サイン攻めにあった。

〔銀座四天王ママたちとのCafeで〕

ミス麗子:それにしても、快盗レーヴルは、
このミス麗子の唇を
奪いにこないなんて失礼よね(笑)

越乃ママ:(笑)。
ミス麗子には叶わないわ!
クレオパトラに敵無しね。

ミス麗子:とんでもない!
これで敵が増えるでしょうね。
ルイフランス、世界のマスメディア、
私の鼻をへし折りたい男たち…。
仕掛けてくるでしょうね。
イケメンBGでも、頼もうかしら…。

水城ママ:まぁ、さすがクレオパトラだこと。

梨里ママ:もう、そんなことまで読めるわけ?

ミス麗子:まぁ、これぐらいわからなきゃ、
話にならないもの…。

蘭子ママ:ミス麗子には、
Dr.れいがついているもの、
強いわよね。

ミス麗子:でも、彼こそミステリアスな奴よ…。
昔の男だったって、話したじゃない?

一同:ない、ない、初めてよ!!

ミス麗子:あらっ、ホント?
聞かなかったことにしてくれない?
破門されちゃう(´;ω;`)。

……………………………

今や、ミス麗子は時の人になっていた ─。

ほとぼりが冷めるまで、
ミス麗子は日本を脱出することにした。

EUショコラアンバサダーとしての旅である。

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