『 天空の恋人館 』No.18 星空のラブソング (最終話)
🎶夕暮れどき
『天空の恋人館』
18. 星空のラブソング (最終話)
恋人館は、12月31日を迎えていた。
王子は、10年前自分を苦しめた
夢の中のライゴンに七色の息を吹きかけると、
瞬く間にライゴンは退散してしまった。
熱心なクリスチャンの王子は、
やはりクリスチャンであった最愛の彼女と
お腹の子を死なせてしまった罪の意識に苦しんできた。
ところが王子は、真尋との出逢いにより、
氷の毒矢から追われる夢を見ることはなくなっていた。
すると、
閃光橋眼下のエメラルドグリーンに浮かんだ2と6の数字が消え、
エアファルコン内で聞こえる、赤ちゃんらしい妖しい笑い声も消えた。
王子最愛の彼女の先祖が、秀吉によって命を奪われた
長崎のクリスチャン殉教者26人の中にいたことを聞いていた。
七色の息は天国の母子を成仏させたにちがいない。
王子は少しは救われてきた。
そして
王子は気のせいか、一瞬声が出たような気がした……。
同じ時刻、ペントハウス内のゲストルームにいた真尋は、
七色の星たちの未来を眺めていた。
そのとき、王子のプラチナルームの呼び鈴が鳴った。
王子のもとへ行くと、
空飛ぶバイク: Pluvier(プルュビエ) が置いてあった。
「ま…ひ …ろ …さ …ん」
「ほ…し…の…く」
かすかに、そう聴こえた気がした!
━━(真尋) [溢れる泪で]
はい、王子様。星の国へ、ですね。
二人の抱擁は最高に美しいシルエットに化していた。
星空に向かって、プリュビエが動きだした。
〈見上げてごらん夜の星を〉のメロディがオペラ調になって、流れてきた━━。
音がしないプリュビエに乗った真尋…。
優佳さんと一緒に、この夜のためにアレンジ作詞した名曲である。
王子の耳もとで、歌詞を〈信じてごらん明日の星を〉にして、口ずさんでいた。
信じてごらん明日の星を 二つの星の
重なる光が 新しい幸せを うたってる
信じてごらん明日の星を 二人のように
輝く星が 新しい幸せを 祈ってる
…
寄り添いあう二人 育てあおう愛を
二人なら 信じあっていけるさ
信じてごらん明日の星を 二つの星の
重なる光が 新しい幸せを うたってる
信じてごらん明日の星を 二人のように
輝く星が 新しい幸せを 祈ってる
新しい幸せを 祈ってる
星の国へ向かう途中で、除夜の鐘が聴こえてきた。
了