No.10 ヨナ姫に芽生えた💚恋ごころ…

月夜の休日🎶

ヨナ姫は疲れきっていた。
二度の大失恋、
見知らぬ地球での恋うさぎ活動など、
あまり強くない体を鞭うっての
日々だった。

献身的な侍女たちやホテルの善き人たち
の存在が彼女の気持ちを支えていた。

ヨナ姫は意識障害から回復してきたとき、
ある夢を見ていた。
みなとみらいの皆さんを
巻き混んでしまったことを
雲の大群から責められている夢だ。
だが、
光りの手らしきものが語りかけてきた。
「星民のために恋をしなきゃ!と
考えるのはよしなさい。
貴女自身の心が求める恋をすれば
よいのです。」

3日ぶりにヨナ姫の意識は回復し、
治療に専念した。
金井がお見舞いにきた。

Dr.なつき:
金井さん、
ヨナ姫が少し回復してきましたよ。

金井:
〔涙ぐみながらヨナ姫の手を握りながら〕
それはよかったです…。

ヨナ姫:
すみません、
皆さんにご迷惑をおかけしまして…。

金井:
そんなこと、おっしゃらなくても。
迷惑だなんて、
どなたも思っていませんわ。
心の家族ですもの―。

Dr.なつき:
そうそう。
ヨナ姫は夢を見てらしたのね。
愛しの王子様は現れました?

ヨナ姫:
…光りの中から手が伸びてきて、
私を抱きおこそうとしてくれましたの。
すると、意識が戻ってきましたの。

Dr.なつき:
まぁ、ロマンチックなお話しだこと(笑)。
…光りの中の王子様はどなたでしたの?

ヨナ姫:
それが…、はっきりしないんです。
ただその手が温かく、
抱きおこされときに幸せを感じて―。

〔Dr.なつきと金井は顔を見合せながら〕
Dr.なつき:
実はね、
ヨナ姫が眠りこんでいた3日間、何回も、
容態を聞きにきた男性がいましてね。

金井:
昨夜クリニック前で
すれ違った方かしら?
ヨナ姫様が気にかかってらっしゃる方
だといいですが。

Dr.なつき:
その方に病状を尋ねられましたよ。
「ヨナ姫の肝臓はどれだけ
悪いのでしょうか?」と。

肝硬変とか肝移植とかのレベルではない
ですから安心をしてくださいと
ご説明しておきました。
彼なら自分の肝臓を差し出すかも
しれませんね。
それほど真剣でしたわ―。
凄いファンが現れてきましたね。

さぁ、もう少し眠りましょ。
きっと午後に彼がくると思ますよ。

        🌱

それから、2時間ほどが経過した。
クリニックスタッフがランチに出かけ、
ヨナ姫が静かに眠っている。

そのとき一人の男性がそっと入ってきて、
心配な様子で、ヨナ姫を見つめていた。

男が小さな声で、独り言をつぶやいた。

「姫様、早く元気におなりください!
心配で、仕事が手につかないのです…」
「仕事が一番出来ないぼくなんかが、
こんな気持ちになっても脈はないとは
思うんですが。お大事に」

男がドアの方へ振り向こうとすると、

ヨナ姫:
〔力のない声で〕
夢の中にでてきていた光りの王子様は
貴方だったのですね、神野さん…。

神野:
〔緊張で顔が強ばっている〕

ヨナ姫:
有り難うございます、神野さん。
毎日私の手をそっと握っていただいて
いたでしょ?

神野:
…、すみません!
失礼なことをしてしまいまして。
分不相応で…。

ヨナ姫:
いいえ、わたくし…、嬉しい。

貴方のような、実直で、誠実な方は
好きですわ。
4日前のコメントにも、
感動していましたの。
あのような真摯なお気持ちの方と
お付き合いしたことが
なかったものですから、
心に染み入りましたの。

神野:
お恥ずかしい。
なんだか、あとからキザなことを
言ったようで、同期の仲間や先輩から
からかわれました(笑)。

ヨナ姫:
私も純粋ですの。
似ているかもしれませんわ。
ですから、恋愛や女性馴れされた方は
少し苦手なんです―。

神野:
じゃ、ぼくは不適ではないんですね?

ヨナ姫:
ええ、全然。
まずはお互いを知り合うために、
お話しをしていきませんか?

神野:
はい!わかりました。

        🌱

そこへDr.なつき、金井、
海外出張から帰国した院長秘書の美木の
三人がやってきた。

Dr.なつき:
まぁ、お邪魔してしまいましたかしら…。
テレビドラマの1シーンを
見ているようで―。

金井:
ホント…。

ヨナ姫:
〔照れて顔がほんのり上気している〕
……あの、…

美木:
はじめまして、ヨナ姫様。
なつきの従姉妹で、院長秘書の美木と
申します。

あっ、そのまま、
横になっていてくださいませ。
神野さん、お久しぶりです。
なんだか、神野さんのカッコいい姿を
見せていただきましたわ(笑)。

神野:
〔頭をかき、照れている〕
お元気でしたか。
あの、…たまたま部屋にきましたら…、
ヨナ姫が目を覚まして…

美木:
はい、はい、神野さん(笑)。
そんなご説明はいいんですよ。
貴方は正直な、いい方だわ。

Dr.なつき:
美木ちゃん、まだシークレットよ。
わかってるわね。
金井さんも、
私たちだけの秘密ということで、
しばらくはそっと見守りましょうよ。

美木:
はい、院長!

金井:
Dr.れい先生の予言があたりましたね!

神野:
予言ですか?

金井:
「盆踊りフェスタの前夜、
神野さんがヨナ姫の心を射止めますよ、
きっと」といわれたんですよ。
そういえば、Dr.れい先生は人の表情を
読むのがお得意でしたものね。

ヨナ姫:
Dr.れい先生から、
「ヨナ姫、自分より貴女の幸せを一番に
考えてくれそうな方を探しましょ!
いいですね」
と助言されていましたの。

金井:
先生はそれが神野さんだと
お分かりだったのでしょう。

〔いつのみにか、
ヨナ姫はまた眠り始めていた〕

………………………………………………

ヨナ姫の病状は日に日に
回復に向かっていた。

「恋する力で脳内免疫を高めている
ことが肝臓の回復に一役かっている」と、
Dr.なつきは推測した。
脳と肝臓は情報を交換しあっているから
である。

No.11へつづく

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