No.8 恋花火

月夜の休日🎶

Dr.れい、Dr.なつき、総支配人室の高山は、
花火デザイナーや地元消防局責任者と
会っていた。

ヨナ姫の国に花火はなく、
花火を見物したいという。
恋うさぎを増やすためにも、
ホテル内で、ロマンチックな恋花火を
あげようと、相談していた。
お客様やヨナ姫に花火を体験してもらう
プランなら、
藤堂オーナーも喜んでもらえるだろう。

Dr.れいはDr.なつきと、7月31日開催の
みなとみらいスマートフェスティバル
花火大会を覗き、
花火デザイナーの助言通りに、
ベストポジションを探した。

打ち上げ場所から350mほど離れた、
反響音が迫力ある汽車道の中央から
見上げる角度60度に立ってみた。
ところが、
30分に20,000発という横浜方式での
花火はヨナ姫にはインパクトが強いに
ちがいないと感じた。

やはり、声をかけなくてよかったと、
二人は顔を見合わせた。
ヨナ姫には抑うつ性があるため、
豪華な花火フェスタじゃない花火に
しようということで意見の一致をみた。

        🌱

早速企画ミーティングの仲間と
意見交換し、
ホテル内のガーデンリバー沿いで、
新しいタイプの線香花火パーティーが
いいということになった。

ロマンス経験が豊富らしい
仲と高城のモテコンビは、
日本の美しい情景を、
バッハやモーツァルトの
ゆったりとした旋律にのせて、
ヨナ姫やお客様にプレゼントする方法を
提案してきた。

ヨナ姫はバッハのチェロ組曲や
フルートソナタ、
モーツァルトの室内楽が
お気に入りだとわかり、
話しは進んでいった。

仲:
この異常な猛暑が影をひそめる
初秋あたりにやりませんか。

高城:
当ホテルで夏のお疲れをおとりいただく
ために恋うさぎスパ+恋うさぎ花火を
セットプランにしましようよ。

ミス花凛:
賛成だわ。
小ぶりの線香花火は、
恋うさぎの始まりのデートには
ピッタリ!
ヨナ姫のハートを射止めるのは
誰かしら(笑)。

一週間ほどで
サンプルとなる線香花火の試作、
「恋花火」ができた。
深夜、いつもの企画メンバーがホテル内
リバー沿いに集まった。

藤堂:
〔スコッチグラスを片手に〕
さてさて、どうかな。

ミス花凛:
オーナー、ワクワクしますわ!

Dr.なつき:
ええ。

和久井:
特別感があっていいですね。
オーナー、こんなときのスコッチは
また格別ですね!

藤堂:
まぁ、な(笑)

神野:
花火デザイナーの方によると、
火をつけてから火の玉が落ちるまでの
燃え方に違いに
名前がつけられているようですよ。

メモしたものがありまして…。
恋花火は、主に4種類にしたそうです。

一同:
‥‥‥‥
〔せっかくの説明だったが、
誰も聞いている感じではなかった〕

線香花火を点す準備がととのい、
数十もの花火が一斉に燃え始め、
歓声や拍手が沸き起こり、感動!

お願いした花火デザイナーの技術は
かなりもので、
和紙が燃える速度を工夫し、
火の玉はおおよそ90秒ほどもつように
なっているという。
また男性と女性で、燃え方も微妙に
異なるようにしてあった。

点火から次第に火の玉が大きくなる
クレッシェンド、
力強い火花が一つずつ弾けるポップ、
次第に火花が散るフォール、
火花が一本いっぽん落ちてゆくダウン。

4つのタイプがあちらこちらで見られ、
美しい。

藤堂:
お~、これは…見事だな!
高山君、間違いなく、
メディアが取材にくるね。
君たち、ヒットだ!
いや、これは大ヒットだよ!!

高山:だと嬉しいですわ。
ねっ、ミス花凛。

ミス花凛:
ええ、話題になりますわね!

なんともいえない可憐な、
さまざまな線香花火に
ヨナ姫の心が熱くなっていた。
その美しいヨナ姫が感動する姿を見て、
男性スタッフたちが笑顔を贈ったり、
話しかけたりしていた。

        🌱

なつきのクリニックに戻ったヨナ姫は、
どっと疲れが出ていた。

リクライニングソファーに腰をかけ、
音楽心理療法を受けた。
5回目だった。
足湯をしながら、アイマスクをかけて、
モーツァルトの弦楽四重奏曲を聴いて
いた。

そこに聞き役の匠、
ヘルスリスナーでもある月乃あゆ美が、
ヨナ姫が頭に浮かんだことを、
静かに聴いて、相づちを打っていた。

ヨナ姫:
なつき先生、あゆ美先生、
少し楽になってきました。
先ほどは感動しすぎて、
なんだか、疲れてしまいまして(笑)。

月乃:
イイお顔で、お休みされていましたよ。

Dr.なつき:
ほんとに。

ヨナ姫:
お二人のお陰ですわ。

翌朝、Dr.なつきはヨナ姫の様子をみた。
モーニングをとりながら、
恋花火お披露目パーティーの話しに
なっていた。

ヨナ姫:
神野さんは宴会仕事でお忙しいのに、
花火デザイナーさんのサポート役も
されたり、
見るからに、優しそうな方ですね。

Dr.なつき:
お人柄がいいようですが、
同僚の仲さん、高城さんらに
押され気味な感じもしませんか?
ヨナ姫は、頼れそうな方のほうが
よさそうにも 思いますが?(笑)。
侍女の皆さんは
何ておっしゃっていますの?

ヨナ姫:
ええ、
人気度や好感度は、
沖さん、高城さん、神野さん、
和久井さん、津山さんの順ですわ。

Dr.なつき:
ヨナ姫は?

ヨナ姫:
……まだ、……その。

Dr.なつき:
やはり、最大の理解者、
Dr.れい先生…?

ヨナ姫:
異性、恋などのレベルでみるのは
不謹慎とさえ思わせてしまう方です。
とんでもないです。
まぶしくて、恋にはなりませんわ。

Dr.なつき:
ヨナ姫への支え方をみていますと、
お可愛いんじゃないかしらと感じて
いますけれど。
純粋で、シャイで、傷を負った方には
それは暖かい方ですよ、Dr.れい先生は。

ヨナ姫:
あっ、Dr.れい先生の目に叶った方を
お尋ねしてみるのは
どうでしょうか─?

Dr.なつき:
いいアイデアですわ。
では、セッティングいたしますね。

No.9へつづく

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