No.17 恋はフランス料理!?
🎶 赤いドレスの女
ラジオ局はスペシャルゲストとして
ミスグリーンを迎えた。
ビル内は歓迎一色であり、
文化庁長官が挨拶に来ていた。
この日は、
ミス麗子の番組で使っているブースではなく、
貴賓室に隣接した広い部屋がブースとなった。
ホワイトハウスの
重要ブレーンの一人であるミスグリーンには、
8人のSPたちが随行しているため、
広いスペースが用意されたのである。
出演前、控え室でミス麗子、
ミスグリーン、Dr.れいの3名が談笑していた。
そこへ、番組MCを務めることになった
江木ディレクターが挨拶にきた。
江木:ミスグリーン、いつも8人とご一緒で、
ご不自由でしょ?
ミスグリーン:それがそうでもないんですよ(笑)。
「ただのマッチョは嫌よ。イケメンを揃えて!」って
わがままを言ったら、この有様で ──。
今や彼らは私の信奉者ですわ。
ミス麗子:まぁ、さすがですこと!
ホワイトハウスも、
ミスグリーンには叶わないようですね。
Dr.れい:長年教えてきた
8人のイメージモデルが、
現実になったわけかぁ。素晴らしい。
ミスグリーン:(笑)。
はい、お師匠様の仰せのようにしておりましてよ。
………………………………
〔番組で、ミスグリーンの紹介を終えたあと〕
江木:さて今宵「麗子の部屋」のゲストテーマを、
" Kissとショコラ " にしましたが、
いかがでしょう?
ミスグリーン:チャーミングなテーマだこと。
ですけど …、江木さん、
それならフランス料理の前菜ですわね。
私たちなら、フルコースがお似合いでしょ?
そう、「恋はフランス料理!?」ではいかが?
ミス麗子:まぁ、最高!!
リスナーも喜んでいただけそうですよね、
江木さん。
江木:はい、
フルコースは願ってもないことで。
ミス麗子:ということで、
前菜のお話しからでよろしいですか?
ミスグリーン:ミス麗子はどうしてもkissの話しに
もっていきたいようですわね(笑)。
いいわ。じゃ、お尋ねするわ。
貴女は、kissの匠と恋をされたことがおあり?
ミス麗子:匠かどうかはわかりませんけど、
お上手な殿方はいましたね …。
ミスグリーンはいかがでしたの?
ミスグリーン:kissの匠とは、
女がkissだけで
その人に魅せられてしまうような男をいうのね ──。
ミス麗子:〔ミスグリーンの目が
一瞬宙を泳いだのを見逃すことなく〕
あらっ、ミスグリーンは
どなたとのkissを思い出してらっしゃるの?
江木:興味津々ですね!
ミスグリーン:ちょっと思い出していましたの。
お友達だと思っていた人が突然私を見つめて、
「今日で友人は卒業させてくれよ」と告げた後、
突然抱き寄せられ、唇を奪われたことが …。
江木:ロマンスですね!
ミス麗子:きっと、
シネマになるようなkissなんでしょうね。
ミスグリーン:さぁ、どうかしら …。
わたくしは、感じることを
鮮度がいいうちに言葉や行動にするのが
モットーですから、
その方の奇襲の攻めに
唇は素直に反応しましたの。
ミス麗子:じゃ、ミスグリーンも、
心にパッと火が灯ったわけですか?
ミスグリーン:だってとろけるほどのkissでしたから、
立っていられなくて …、
気がついたら、眠っていましたの。
ミス麗子:お友達が一瞬にして、
恋人に、ですか?
ミスグリーン:いいえ、違いますわ …。
彼は前菜止まりよ。
フルコースになる前菜ではありませんでした。
その当時のわたくしは
メインディッシュの彼氏がおりましたの。
ですから、その人は …、
まぁ、タイミングがあえば、
女性ホルモンが萎えない程度の、
カンフルアンチエイジングサプリでしたね。
江木:なかなか発展家でらっしゃいますな。
ミスグリーン:わたくしのような女が
アーチストとしてニューヨークで
生きるというには、
一に鮮度、二に鮮度が大事でして。
男も、仕事も、趣味も、
鮮度を忘れた瞬間から、
ニューヨークにのまれてしまい、
窒息してしまいますわ。
江木さん、お分かり?
江木:……〔何回も頷く〕
ミスグリーン:銀座のクレオパトラのミス麗子も、
常に恋をしてらっしゃるでしょ?
kissのお相手は、三桁かしら …(笑)。
貴女も、鮮度が勝負でしょ?
ミス麗子:ええ。
Dr.れいからの教えですしね。
恋も、仕事も、
守りにはいった途端、鮮度が落ち、
未来に風が起きないと、
何回も教わりました。
ミスグリーンの生き方は眩しいぐらい、
煌く命の風を感じさせてくださいます。
江木:メインディッシュのお話しはまた次回の
お楽しみということで ──、
今宵はここまでとなります。
お疲れ様でございました!
…………………………
この後、花束や記念品が贈られ、
ミスグリーンはブースを出た。
数日後発表された番組聴取率では、
全番組中最高の数字を弾きだした。