No.14 ミスグリーンの泪
🎶春の輝き
ミスグリーンの脳裏に、
あの名探偵さんの顔がよぎった。
人に弱みをみせない
ミスグリーンだったが、
思わず、真尋に電話をしてしまった。
──(真尋)今、 門司ですか?
──(ミスグリーン)え?
私は何も話していないのに‥
──(真尋)以前、
薔薇のお庭で、
日本で一番好きな場所について
お尋ねしましたら、
レトロ、トロッコ、ふぐ‥って
ヒントをくださったじゃないですか。
──(ミスグリーン)
あっ、そうだったかしら。
──(真尋)
ジュエリー修行をされていたのが
神戸だとお聞きしていましたし。
そちらは調査済みでしょうから、
門司港ではないかと思っていました。
それに、
私の周りには情報収集が
お得意の方々がたくさん。
師匠ほどの
世界的著名人の動向なんて、
簡単ですよ…(笑)。
──(ミスグリーン)
貴女には叶わないわねぇ…(笑)。
ご迷惑でしょうけど、
力になってくださらない?
──(真尋)
もうなっています‥とも(笑)。
日本の一番弟子が
師匠を放っておくと思いますか?
かなり色々なことがわかってきました。
実は、
新聞社の副社長をやっている
叔父のコネで、
旧神戸商船大OBで、
造船輸送業界のドンに
お会いすることができまして…。
やっと糸口が見えてきました。
ミスグリーン、
吉報を待っていてください!
───(ミスグリーン)
〔感激で微かに声が震えて〕
まぁ、貴女という人は!嬉しいわ。
じゃ私、神戸に戻りますわ。
───(真尋)
もうおひとかたお目にかかりますので、
ホテルオークラ神戸で
夕食はいかがでしょうか?
───(ミスグリーン)はい、はい、
真尋さんお好みの神戸ビーフの
鉄板焼をご馳走させていただきますわ(笑)。
───(真尋)
キャッ、やった!
じゃ、張り切っちゃいますネ!
あとひと押しですから…。
ミスグリーンは
お部屋で一休み
なさっていてくださいませ。
……………………
〔ホテルオークラ神戸のラウンジで〕
(ミスグリーン)…有難う、真尋さん
〔深々と頭を下げるミスグリーン〕
(真尋)すべて、わかりましたよ!
(ミスグリーン)
森嶋さんは生きてらっしゃるの?
(真尋)ご健在です。
しかもまだシングルのようですよ。
(ミスグリーン)
〔言葉にならず泪をこらえるミスグリーン〕
…よかった‥
真尋の説明によると───。
森嶋様は
新幹線や車両を
船で輸送する仕事と
その研究者でしたね。
専門家が少ない世界でしたから、
当時は世界から森嶋さんのような
若いスペシャリストは
目をつけられやすい事情が
あったようです。
ミスグリーンとの門司港のあと、
ある国の造船輸送プロジェクトの
スペシャリストとして、
車両を積んだ特殊タンカーの
チェック緊急用員として、
シンガポールへ
出向かれたそうです。
所属会社の人事部長と
CEO以外は箝口令が
敷かれた特別任務でした。
(ミスグリーン)まぁ、
私などには知る由もなかったはずね…。
(真尋)
森嶋様は門司港では
かなり悩まれていたと
想像をしますけど。
森嶋様は特殊な車両とともに、
シンガポールを出港し、
マラッカ海峡を通って
アフリカの喜望峰を越して、
大西洋を横断。
さらにブラジルのアマゾン河の
マナウスという港に着き、
そちらで造船輸送の研究に
尽くされたとか。
しかも海賊に
襲われることもあるコースらしく、
万一のときでも
最低の被害で終わるための
車両破壊防備研究で、
ご苦労があったようです。
さぞ、
大変だったと思いますよ──。
(ミスグリーン)
森嶋さん、生きていてくださって、
本当によかった…。
それだけで嬉しいですわ。
真尋さん、よくここまで、
調べていただいたわね。
(真尋)
森嶋様はそのお仕事が終わり、
来週、日本のここ神戸に
帰還されることが
決まったんですって!
(ミスグリーン)
…えっ、ほ、本当に?
なんということかしら。
〔手をとりあって抱き合う二人〕
その夜、
真尋は極上の神戸ビーフを食べ、
遅くまでバーで、
ミスグリーンと語り明かした。
🎊🎊🎊
いよいよ、次のNo.15が最終稿です。
お楽しみ👋👋