碧月れいの【ショートshortシリーズ】No.3 ジュネーブ to 神戸へ

🎶夕べの星


『ショートshortシリーズ』

3. ジュネーブ to 神戸へ


パリでの舞台に人生を賭けていた由良が、

突然舞台稽古を休んだ。
久々のうつ病が出たのである。

<こんなときに、なぜ?>

由良は急性うつで、緊急入院した。

退院後、由良はパリ駅から
ジュネーヴ行きのTGVリリア高速鉄道に乗車した。
滞在型メンタルリハビリセンター
に向かうためである。

ヨーロッパのセレブたちから
信頼されているDr.トーマス院長は
名医で知られていた。

相手を母性的に包む雰囲気は、
神経の11本が楽に呼吸し始めているように感じさせた。

Dr.トーマスは滞在中の由良の中に
素材としての価値や才能を見いだしていた。
手話ができる由良への関心が高かった。

━━(Dr.トーマス)
友人が神戸に恋人館をつくりたいと言ってましてね、
舞台や芸術に明るいイケメン男性がほしいようです。
君は彼のイメージにピッタリだし、
リハビリ治療だと思って一緒に行きませんか?

━━(由良)
日本ですかぁ。
新しい人生が見つかるかもしれませんね。
神戸、ワクワクしてきました、先生。

由良は舞台人としては限界がきていることを悟っていた。
日本へ行って、新しい人生を送れるだろうか。
デリケートな自分を支えてくれるパートナーが出来るだろうか。

不安はいっぱいだったが、
まずは、Dr.トーマスを信じて、神戸の恋人館に
行こうと決めた。

…………………

〔 建設中の恋人館付設ガーデンにて 〕

由良は手話を交えながら、
声の出ないゼロの王子に丁寧に挨拶していた。

ともにDr.トーマスの教え子として、
精神分析をリハビリに役立てようと
意気投合しあっていた。

高梨やベスも、素朴で、誠実な由良の人柄を歓迎していた。

こうして、由良は最初から恋人館のスタッフになっていった。

……………

ところで華音が由良と出会ったのは、
由良が再びバーテンダーの勉強を始めた頃だった。

由良は直感で、
華音が自分と同じ心の悲哀をみた人ではないかと感じた。
花火の日、話し込んでいるうちに、
華音が純粋で、心温かな女性だとわかってきた。

< 華音さんは素敵な人だけど、
気のせいか、心の中に誰かいるような
でも、どんどん華音さんに惹かれていく。困ったぁ……>

由良は、自分の中にこんな熱い気持ちが息づいていたとは──。

何だか少しやれそうな気がしてきた。

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