碧月れいの【ショートshortシリーズ】No.2 フレグランスメゾン
🎶3月の澄んだ空
『ショートshortシリーズ』
2. フレグランスメゾン
薔薇ガーデンでマジックを披露していた一色 翔は、
多彩な美的趣向を持っていた。
その一つ、フレグランスメゾン(香りの職人)として、
女性の美意識を高めていた。
散策中の亜梨沙ー。
足を止め、タロット占いをしている。
同じく散策していた一色は、
亜梨沙に、どことなく亡き母・千夏の
面影を感じていた。
自分から女性を好きになることが
なかった一色だったが、
亜梨沙の清らかな瞳と優美なエレガントさに、
一瞬で釘付けになってしまった。
一色と亜梨沙にはいくつもの共通の趣味があり、
不思議と波動があった。
一色はアロマが趣味だとわかると、
一色の部屋にある
aromaコレクションをぜひ見たい!と、
亜梨沙は言った。
亜梨沙は、何十種類ものアロマの香りに
魅せられていた。
中でもフェロモン香水~ジュテーム
を嗅いでいるうちに、
亜梨沙は香り酔いして、眠ってしまった。
目を細めながら、亜梨沙に投げキスをする一色。
<いつの日か、貴女を愛せたら…>
一色は亜梨沙に指一本触れてはいなかった。
──(一色) 亜梨沙さん、起きてください!
<亜梨沙の気品のある美しさに見とれながら>
ぼくはスチュワード田村クリニックの仕事に
戻らなくてはならないので、
待合室で、寝込んだことにしておきますね。
一色は美容内科医/総合診療内科医の顔もあった。
──(亜梨沙)〈至福そのものの顔をして〉…は…い。
亜梨沙は夢を見ていた。
見知らぬ森のジュータンの上で、
全裸になろうとしている自分に
白のシルクガウンをかけようとしている
優しい貴公子Xが。
ふと、タロットカードが頭に浮かび、
"恋人"と"ソード4"の二枚が見えている。
大変! X が入院する!
クリニックの待合室で真尋たちに起こされたとき、
亜梨沙は、昨夜からの記憶が
ほとんどなくなっていたことに気がついた。
ただ一つだけ確かな気持ちが。
<私、好きな人…が、できたみたい…>
二人の愛のゆくえは…。