『 天空の恋人館 』No.1 美しき本能
🎶雨の恋人たち
『天空の恋人館』
1. 美しき本能
Xmasイブまであと5日となった12月20日、
師走にすれば、さほど寒くはなかった。
夕方4時、恋愛芸能スクール・マンハッタン− Ⅱ
同期5人のスクール生たちが
神戸ゲートウェイで顔を合わせていた。
5人は〈スタイリッシュ 5〉 のユニットを組む、
友人同志でもあった。
期待に胸を膨らませて、
恋人館を目指そうとしていた。
恋人館は、謎のオーナーである《ゼロの王子》が
建てた世界のセレブたちの社交の場であった。
琥珀色が美しいキャッスルは
贅の限りを尽くして建てたものらしい。
今夜から25日まで、セレブたちは、
ダンスに、 シネマに、シャンペンに、
花火に、フリーデートにと、
ベストなパートナー探しに、
美しき本能のまま、Xmasタイムを過ごすことになる。
亜梨沙、うらら、リリカのポジティブ組は、
ワクワクしていている。
恋の達人たちだから、
張り切っていて当然である。
一方の華音と真尋は、
好奇心に目を輝かせながらも、
何が起きるのかわからないので、
不安を隠せなかった。
ただ5人の中では、
傷心が未だ癒えない華音が
新しい恋とめぐりあえるように、
真尋は願った。
──(亜梨沙)みんな、これ、ヤバくない?
──(うらら)だよね、
でも、マスカレード(仮面舞踏会)
パーティー参加費100万が、タダだよ。
──(リリカ)やっぱ、やめない?
ポジティブ組が口を開いた。
ワクワクしながらも、
どこかしら緊張しているのだろう。
──(うらら)なんかさ、きっと、
目立つ私たちが役に立つことがあるんだよ。
──(リリカ)特殊なコンパニオンかなんか、
させられるんじゃないの?
うららとリリカは、発展家らしく、
恋話に盛り上がっている。
──(リリカ)だって、
イイ男たちと自由に恋してもいいんでしょ?
──(うらら)そうみたいよ。イイ男、いるかしら?
リリカとうららは恋に恋する乙女なのである。
恋の冒険旅行が始まることには
ウキウキするけれど、
華音と真尋は、ちょっぴり胸騒ぎが……。
こうして、5人は恋人館でのマスカレードに
参加することになった。
今年は、世界から、200名ほどのセレブ男女が集まり、
ドレスコードのアイマスクを
外すことはできない規定になっていた。
5人は一人ひとり、
ドレスとコーディネートした
カラフルなアイマスクで踊ることになっている。
世界のセレブにも劣らず、
さぞ絵になるにちがいない。
ところでスクールの藤堂オーナーの話しでは、
5人とも、'大切なもの' を何も盗まれなかったら、
Xmasイブに【ゼロの王子】に会えるというのだ。
──(真尋) 女性にとって、“大切なもの”…。
ゼロの王子に会えるための条件なんだぁ。
ミステリアス!!
みんな、まさかこんな夢のようなXmasプレゼントを
もらえるなんて、信じられなかった。
見知らぬ案内人【ゼロの王子】と
ミステリアスな恋人館にトキメキながらー。