『 天空の恋人館 』 No.3 神の小径 ~ エアーファルコン

『天空の恋人館』

3. 神の小径 ~ エアーファルコン


そんな夢のような話を、
恋人館執事の高梨から電話で聞かされていた。

5人は妄想に近いイメージを描きながら、
異人館山の手の坂を歩いていた。

少し風が冷たくなったからか、
緊張度が増してきていたのか、

いつの間にか、みんな口数が少なくなっていた。

異人館裏から10分ほど神の小径を歩くと、
地図にない閃光橋(せんこうばし)があった。

その眼下には、
目を疑うほど美しいエメラルドグリーンの海が見え、
5人は絶句した!

月に照らされた冬のトワイライトタイムは、
最高に美しかった。

真尋は、どこかで見た原風景だと思った。

━━(真尋) 長崎五島にある桐の入江に似ていない?
━━(華音)私が失恋したときに行った場所に似ている。
━━(亜梨沙)長崎~天草地方は、
確か世界文化遺産よね。そりゃ、美しいでしょ。

すると、華音が妙なことを言った。

──(華音)ねぇ今…2と6って…
うっすら浮かびあがって見えなかった?

もしかしたら、この入江は天国への入口じゃないの?
この世の美しさじゃないもの。少し怖い─。

──(亜梨沙)華音、わたしも見た!見た!
2と6っぽかったよ。

吸い込まれそうで、無気味…。

華音、亜梨沙とも、大きな目を見開いて、
興奮気味だっ た。

 ──(真尋) 見逃しちゃった、残念…。
その数字は、きっと 意味があるはずよ。
頭に置いておくね。
それよりさ、あのゴンドラに乗るみたいよ。

〈エアーファルコン〉っていうんだぁ。
いよいよだわ。早く行こう!橋は寒いよ。

と、真尋は自分に言い聞かせるかのように語った。

〈エアーファルコン〉と描かれたゴンドラ乗り場には、
白髪の老紳士とクールそうな女性が出迎えてくれていた。

 ──(高梨)  皆さま、ようこそ。
ジェニー高梨と申します。
恋人館主人より、皆さまのお世話役を仰せつかっております。

こちらは、同僚の、ベス・クリスティーヌでございます。

──(ベス)  皆さま、恋人館へようこそ。
十分お楽しみくださいませ。

真尋は、5人を紹介した。

8人乗りの〈エアーファルコン〉は快適だった。
横浜みなとみらい21のエアーキャビンを
モデルにしたというが、

かすかに揺れる程度で、
風の中を滑るように終点へ向かっていた。

まさに1/f ゆらぎのような、
心地よい感覚を体感していた。

しばらくすると、
微かに声のような音がしてきた。

──(亜梨沙)これ、赤ちゃんの笑い声じゃない?
──(リリカ)まさか。似てるけど、外の風の音だと思うよ。

 高梨たちは、
顔色ひとつ変えずに眼下に眼をやりながら、

「さぁ、わたくしは耳が悪いので、
あいにく聞きとれませんでした…」と言った。

ベスは黙ったままだった。

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