No.13(最終話・後編) 恋薔薇の微笑み
9月のある日、
マダムベルプランチームは
ヨナ姫の故郷へ向かった。
目が覚めたときは、一同、
ティファ二ラーレ星の〈薔薇館〉にいた。
外に出ると、
本当に車が空を飛び、STAR CABINが
東西南北に動いていたのだ。
星人たちの住まいは一軒一軒カラフルで、
まるでおもちゃの国にきているかのように
錯覚してしまいそうである。
一同、タメ息をつくばかりだった。
薔薇館のスタッフはほとんどが美しい
ファッションに身を包んだAIだった。
チームのメンバーは
次々に眠りから覚めたが、
神野以外は少し疲れているようだった。
そこへヨナ姫付きの侍女たちのリーダー、
クァンさんが姿をみせ、
笑顔で歓迎の言葉を述べてくれた。
クァン:
神野さんや皆さんのお陰で、
ヨナ姫は元気になられ、
お国は平穏を取り戻しつつあります。
星王も少しずつ回復に
向かっておりまして、
みなとみらい21の皆さんからの交流の
申し出を大変喜んでおられます。
地球は月に一番近い星で美しく、
月を愛する星王は大歓迎だとのことです。
Dr.なつき:
それは喜ばしいお知らせで、
ホテルスタッフ一同、
大喜びすると思います!
星王様によろしくお伝えくださいませ。
神野:
いや、よかった、
本当によかったです!!
クァンさんのお顔を拝見して、
少し安心しました。
クァン:
ここはゲストハウスの薔薇館で、
皆さんの別宅だと思い、
ご自由にお使いを。
何なりと、AIに尋ねてください。
神野さん以外の皆さんは、
まずはお部屋で少しお休みいただいて―。
お話しはそれからということに
いたしましょうか。
🌱
神野は七色の〈薔薇キャッスル〉に
案内された。
奥の部屋からチェロによる
月夜の休日🎶のメロディが
聴こえてきた。
扉を開けると、
天使のように麗しいヨナ姫が
演奏していた。
神野に気づいたヨナ姫が、笑みを称え、
神野のほうへ駆けよってきた。
〔固く握手し、同時にハグしあった〕
ヨナ姫:
〔泪をためながら〕
お会いしたかったです…
突然あのようなお別れをしてしまい、
申し訳ありませんでした。
恋うさぎ力を取り戻すことが出来、
星人たちは
とても喜んでくれておりますの!
有り難うございます。
神野:
いえ、お役にたてて何よりです。
…ところで、ぼくたちは二度目のキスを
してはいけないんでしたね。
ヨナ姫:
そのお話しですが。
星王が地球の方にご迷惑をかけては
いけないからと、
人望の厚い双子の妹に
婿を迎えてもよいと
おっしゃっていただいたのです!
神野:
じゃ、ヨナ姫はどうされるのですか?
ヨナ姫:
わたくしも、星王特使として、
何回もみなとみらいへ伺い、地球人の
お仲間にならせていただけないかと…。
その、…つまり…。
神野:
じゃ、ぼくたちは愛しあえるのですか?
ヨナ姫:
〔恥ずかしそうに〕…ええ。
神野:
ただ世界中、
惑星中が驚く結婚式になりそうですし、
興味本位にヨナ姫を見にこられる
観光客も増えますよ。
ヨナ姫はまた心を病みませんか、
それが心配です。
ヨナ姫:
神野さん、貴方に恋してよかったです!
貴方は生涯わたくしを守ってください
ますわ。
今、そう確信いたしました。
〔ヨナ姫が二度目のキスをした。
積極的な星娘に驚く神野〕
…………………………………………
ヨナ姫が弾いていたのは、
ストラディヴァリウス製のチェロ
「レディース・ローズ」だとか。
この世に12億円もする楽器が存在する
というだけでも驚きなのに、この星には
ストラディヴァリウスのハープや
マンドリンやギターもあるという。
ハープは〈ザ・プリンセスマリーナ
ガーデン横浜〉に寄贈し、
ハーピストの金井さんとご一緒に
演奏したいと考えていた。
神野:
驚かされてばかりで、
心臓がもたないです(笑)。
ヨナ姫のお気持ち、
金井さんは感動されるだろうナ、きっと。
藤堂オーダーは自慢しまくりますね(笑)。
ヨナ姫:
そうだといいですわ―。
🌱
ヨナ姫は友人となった
Dr.なつきと金井とハグしあい、
藤堂コンツェルンのアイドル、眞尋とも
意気投合した。
眞尋は早速、美意識倶楽部の開設を
提案した。
ヨナ姫:
わたくしは、一瞬で眞尋さんのファンに
なりましたわ!
三人目のお友達にさせていただけません?
眞尋:
そんな、大、大光栄!でこざいます。
私は一番目のお友達にしても
よろしいですか?(笑)
ヨナ姫:
まぁ、何てチャーミングな方でしょ?(笑)
眞尋の迅速なビジネス脳に
関心をもったヨナ姫は、
それが
Dr.れいによるプログラムだと知り、
「私も先生に学びたいですわ!」と
言いはなった。
ヨナ姫を囲み、
侍女とマダムベルチームメンバーで
ディナーを終えた。
🌱
ヨナ姫と神野は、〈流れ星の泉〉という
スカイガーデンルームにいた。
360度見えるいくつもの流れ星に
見守られる中、二人は愛しあった。
神野は緊張しながらも、優しいタッチで、
ヨナ姫を幸せに導いていった。
薄暗かったが、
ヨナ姫の真っ白い肌は
神野を虜にするには十分であった。
ベッドのそばには、最高のスコッチが。
‘恋薔薇の微笑み’と名付けられ、
極上の味であった―。
終わり。