『 天空の恋人館 』No.12 キスの罠

🎶静寂の星空

『天空の恋人館』

12. キスの罠


徐々に亜梨沙の記憶が戻り始めていた。

20日から21日に変わる深夜零時、
亜梨沙は快盗シルクキャッツからの
カードのことを考えて、
ガーデンで花火を見上げていた。

そこにタキシードベストの似合う紳士、
一色翔がマジックを見せながら、
話しかけてきた。

甘ったるい口元からこぼれる
セクシーな笑顔と、
漂うほのかな香りは亜梨沙を悩殺し、
いつのまにか意識が失せていた。

気がついたときは、
亜梨沙は全裸の上に純白のシルクを纏い、
一色翔のセクシーな唇が‥‥。

抵抗する気持ちにならず、
彼の美しい瞳に見つめられながら、
幾度となく唇は奪われた。

━━(真尋)  もしかしたらさぁ、
碧川や三井というお相手も、
とろけるようなキスだった?
華音は?

━━(リリカ)  ‥‥‥えっ、うん、そうだったわ。
ワタシ、立ってられなくなったもの。

━━(うらら)  もちろんよ。
まだ唇にその余韻が残ってるかな。
照れちゃうけど、
今までの彼氏は勝負にならないわね。

━━(華音)  別れ際に熱くキスされたの。ワタシからも、
キスしちゃった! みんなは信じられないでしょ?

━━(真尋)  ‥‥それ、たぶん、‥‥誰かの罠だよ。
一番大切なものって、唇と心じゃない?

亜梨沙、リリカ、うららの3人は、
「あっ、そうかぁ、私たちは奪われたんだわ。
これで、ゼロの王子とデートする資格を失ったわけね。
悔し~イ!」

恋愛免許証をもつ彼女たちでさえ、
こんなにも簡単に惚れさせるキスの力とは何だろう━。

真尋は、美しい脳細胞の窓を開いた。

快盗シルクキャッツは、
何人かの変装チームで忍びこんでいる気がしてきた。

碧川と三井と由良は、
リリカとうららと華音たちの唇と心を奪う役目だったのではないか。

そして快盗シルクキャッツこと、一色翔は、亜梨沙
担当だったとは考えてみた。

変装したシルクキャッツと変装チームの男たちに
キスされた女性たちの多くが彼の虜になる理由はこうだ。

藤堂オーナーが編纂している
「恋と性の美意識事典」(藤堂出版社)では、

キスの効力について、こう説明されていた。

💋女性ホルモンや幸せホルモンや
エンドルフィンが分泌され、綺麗になる。
💋アレルギー反応を招く抗体の生成を抑え、
症状が楽になる。
💋顔が引き締まり、バストアップ力がつく。
💋遺伝子レベルで相手との相性を図れる。

快盗シルクキャッツチームの美しく悪魔なキスは、
女性をスイートエレガントなセクシー脳にさせ、
色香の源泉を湧き起こさせてしまう。

こうしたキスの力を知った者が、
5人に罠を仕掛けてきた
ことは間違いない。

真尋は、カードを送ってきたゼロの王子、
快盗シルクキャッツ、
藤堂オーナーたちが仕掛けてきた
罠らしきゲームについて、
みんなに説明しはじめた。

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